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April 12 うどんげ日記外伝 因幡てゐ 「近親相姦の恐れ有り 2」○月×日△曜日
班長になってから、毎日餅を付く僕がいた。
「なかなか上手じゃない、天職なんじゃん?」
僕の隣りでへらへらと笑う彼女も、もう見慣れた光景である。
毎日来てくれるのは嬉しいのだが。
「他にする事ないんですか?」
僕より彼女の方が暇そうだった。
「あー何?やっぱり見られているとやりにくいかい」
まぁ上司に毎日見張られてちゃアレだよね~。
と腐る彼女。
相変わらずへらへらと笑っているが、これは失言だっただろうか。
そうではない、僕の面倒で彼女に迷惑がかかってしまうのが嫌だったのだ。
僕としては毎日彼女に会える事は嬉しい。
退屈しなくてすむし、何より一人ぼっちになるのは不安だ。
そんな不安も彼女が会いに来てくれるだけで何処かに消えてしまうのだから、今の僕にとって、彼女の存在は無くてはならないものだと言える。
「側に居てもらえもらえるのは助かります」
「ふふーん、そうだろうそうだろう素直が一番だよ」
さも嬉しそうにニコニコと笑う彼女を見ていると、妖怪である事を忘れてしまいそうになる。
まぁ、妖怪だろうが何だろうがそんな事は大して問題にはならない。
この幻想郷では特にだ。
それに、この兎少女が僕にとって大切な存在である事も事実である。
それだけで十分だ。
そうやって、いくらか餅を付いた頃である。
遠くから視線を感じて手を止める。
辺りを見回すと探すまでもなく、その存在は見つかった。
かなり遠く表情は伺えないが、頭に生えた兎の耳らしきものと真っ赤な瞳が目立つ。
身の丈は僕と同じか少し高いくらいだろうか。
他の兎とは違う人の姿をしたそれは、兎少女の話に出てきた人物で間違いないだろう。
「あの人・・・さっきからこっちを見てる」
「ん、ああ、気付いてるもんだと思ってたけど」
あんたここ数日はずっと見られてたよと僕のすぐ隣りまで来て言う彼女。
「あれは鈴仙、こないだ話した月の兎ね、何やってんだろうねー」
何故かニヤニヤとしながら言う彼女に疑問を抱きつつも、僕はあの人物に興味を引かれていた。
「鈴仙・・・」
「あー、一応だけど様を付けた方がいいね、ここの因幡達の中では一番偉い事になってるから」
頭をボリボリと掻きながら面倒くさそうに教えてくれた。
「鈴仙・・・様・・・」
「・・・・・・なに、気になるの?」
そりゃああんな遠くからでも見られていたら気になるだろう。
この距離では挨拶もできないし、はてどうしたもんかと思い始めた頃には、既に鈴仙様の姿は無かった。
「まぁ危険なヤツじゃないから、気にしなくても大丈夫だよ」
見た目は色んな意味で危ないけどね、と付け足す彼女。
「そんじゃまた明日、サボってたら殺すからねー」
ばいばいと手を振って彼女も行ってしまった。
僕はと言えば先程の、鈴仙様の事が気になってしょうがなかったのだが。
まぁこの永遠亭に居ればまた会えるだろうと思い、寝る事にした。
「ああしまった」
今日も寝る場所を訊くのを忘れてしまった。
○月×日△曜日 いつもの様に道具小屋で目覚めた僕はいつもの様に臼と杵を運びだし、餅をついていた。
道具や材料の場所はもう覚えたので一人でも餅はつける。
のでせっせと餅をつくが、やはり彼女が来るのを期待している僕がいた。
しばらく餅をついていると期待通りに彼女は現れたのだが。
「やあやあ、真面目に仕事をしてるじゃないか、関心関心」
うんうんと一人で頷いているが、おかしい。
「今日は襲って来ないんですね?」
「ん、何言ってんのさ、普通は女の子が襲われるもんだよ」
いやそうじゃなくて、まぁ毎日死ぬ目に合うのもどうかと思うし、たまには普通な日があっても良いだろう。
そうだ、それよりも尋ねたい事が幾つかあるのだった。
「あー、えーと、稲葉様ちょっと尋ね・・・」
「何それ、鈴仙様みたい、やめてよ」
む、呼び方の事だろうか。
「いや、でも・・・」
「やめて」
っ!?
予想外に強い調子で言われたのでちょっと驚いてしまった・・・。
そんなに失礼な事だったのだろうか・・・。
「てゐで良いよ、普通にさ」
「じゃあ、てゐ様」
「んーあー、まぁいいか、で何だっけ?」
納得いったのかそうでないのか、とりあえずは笑ってくれたので良かったのだろう。
そして僕はついに切り出した。
ここへ来てからずっと、僕にとって最大の問題となっている事。
「僕の寝る場所どこすか」
かくして、餅つき班長の部屋はあてがわれた。
てゐ様は目を丸くして驚くと、一瞬の後に爆笑していた。
違う、ここは笑う所ではない。
まぁ普通に部屋をくれたのだが、冗談でも一緒の部屋で寝ようとか言ってくれなかったのは残念な様な気がしないでもない。
そう言えば、てゐ様は一体どこで寝ているのだろうか。
部屋がわかっていれば何かと不便が無くて良い。
今度会ったら訊いてみようと適当に考えながら。
自分の部屋をゆっくりと見回すことも無く、僕は眠りに落ちていった。
おやすみなさーい。
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