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    April 10

    うどんげ日記外伝 因幡てゐ 「近親相姦の恐れ有り 1」

    ウドンゲ日記外伝 因幡てゐ
     
    「近親相姦の恐れ有り 1」
     

    ○月×日△曜日
     
    永遠亭。
     
    竹林の奥にコッソリと佇む、永遠と言う結界に守られた月の民と兎の楽園。
     
    僕はこの日記を書いている冥界の因幡である。
     
    冥界のと言っても至って普通の因幡なので幽霊ではない。
    ましてや半霊でもなければ妖怪でもなく、色々とあって冥界にあるお屋敷で庭師をやっていただけと言う話だ。
     
    更にはそれも過去の事であって、今ではこれまた色々とあり、この永遠亭で餅をつかせてもらっていると言う訳なのだ。
     
    これは、僕が永遠亭で餅をつき始める前のお話し。

    その日も僕には仕事が無かった。
     
    冥界にいた頃は亡霊のお嬢様にからかわれたり庭師の少女と稽古をしたり、他にも騒霊三姉妹とお喋りしたりとそれなりに退屈の無い毎日を送っていた僕にとって、この永遠とも思える退屈な日々は、まるで竹林の毒なのではないかとも思える程に僕の心を焦らせていた。
     
    とは言ってもここは人里離れた竹林の更に奥。
    目に付くのは冥界にあるそれ程ではないが、広い敷地を持ったお屋敷と兎の姿ばかりだ。
     
    仕事は無いかと尋ねたいがまさか兎に言葉が通じる訳も無く、僕はただ流れるだけの時間を、ただ流れるだけのままに、ブラブラと過ごすしか出来ない。
     
    ヒマである。
     
     
    ○月×日△曜日
     
    ヒマである。
     
    もうここへ来てかれこれ10日は経つだろうか。もっと経ったかも。
     
    特に何が起こる訳でもなく、僕はやっぱりブラブラしていた。
    ブラブラついでにこの永遠亭を探検してみたりしたのだが、特に何も無い。
     
    唯一気になった事と言えばこれは不思議な話なのだが、永遠亭を外からぐるりと一周した際に掛かる時間と、永遠亭内の廊下をぐるりと回って一周した際の時間が大きく異なるのだ。
     
    通常、内側を周る様にすればその時間は短縮されるはずである。
    だがおかしな事に、廊下を歩いて一周するとその時間は外を周った時の2倍以上は掛かってしまうのだ。
     
    まぁそれも、不思議な建物だなと思うだけで理由なぞわかる訳もなく、考えるだけ無駄に終わってしまうので残念な事に暇つぶしにはならなかった。
    兎に訊く訳にもいかんしなぁ等と呟きながらブラつく僕の前に、それは唐突に姿を現した。
     
    お屋敷から少し離れた所にある大き目の小屋。
     
    中から現れた小柄な少女。
     
    少女には耳が生えていた。
     
    兎の耳。
     
    真っ白な肌に真っ白なワンピース、それと対にするかの様な黒い髪、真っ赤な瞳。
     
    そうだあの時。
    僕が冥界から突き落とされて竹林に迷いこんだあの日。
    僕を永遠亭に連れてきた少女。
     
    あれから姿を見ていなかったが、やっぱりここにいたのだ。
     
     「あ」
     
     「あ」
     
    まぁお互いになんとも間抜けな一言目だったと思う。
    正に運命の再開であった。
     
     

    ○月×日△曜日
     
    ヒマである。
     
    あれから一月は経っただろうか。
     
    ヒマである事に変わりは無いが、退屈では無くなった。
    なぜかと言えば・・・。
     
    「おーいおーい」
     
    遥か彼方から物凄い勢いで接近してくる声っ!!
    スピード感など微塵も感じさせない様な暢気な口調だが、一切の油断は禁物だっ!!
     
    なぜなら一瞬でも回避が遅れれば死んでしまうからっ!!!!
     
    「かわしてみせる・・・っ!!」
     
    もうこれで何度目になるか良く解らないが、それだけ経験を積んできたんだ。
     
    今日は右か、左か・・・っ?!
     
    「やぁやぁ今日もヒマそうじゃないか」
     
    「ええ、ここには退屈がっ――――――――」
     
    真正面っ!!
    これは一番多いパターンっ!!見切ったっ!!
     
    「ありませんから」
     
    ドコーンと派手な音を立てて振り下ろされたのは彼女の倍はあろうかと言う程の大きな槌。
     
    僕は左に一歩、チョン避けする事で回避に成功した。
     
    「ふふん、大分慣れてきたみたいじゃないか」
     
    「そりゃあ、こうも毎日叩かれれば慣れますよ・・・」
     
    この日記を読んでいる方はすでにお気付きだと思うが、彼女こそ永遠亭のミョルニール「因幡てゐ」様である。
     
    元は普通の因幡だったそうだが健康すぎて妖怪になったらしい。良く解らない。
     
    身長は10代前半の少女程しか無いが、妖怪特有の怪力と獣の素早さから繰り出される一撃にはスキンシップと呼ぶには程遠い即死感が漂っている。
     
    「いやいやしかし、あんた毎日何してるの?どこに配属されたのさ」
     
    「貴女こそ、よくも毎日飽きずに殺そうとできるものですねぇ」
     
    僕をこの永遠亭に連れてきたのは因幡てゐ様なのだが、その場で放置されたりなんだりかんだりで、そも全てに置いて何も解らない。
     
    そんな事を言って述べると彼女は大層驚いていた。
     
    「ここは外から入って来るモノに関してはかなり厳しいんだよ」
     
    誰にも会わずに良く生きていられたもんだねぇとニコニコしながら凄い事を言っている。
    生きているのが不思議だとでも言わんばかりだ。
     
    僕は面白い冗談を聞いたつもりになって自分をごまかした。へへ。
     
    「つまり何処にも配属されて無い訳かぁ・・・」
     
    と口元に指をあてて悩んだフリをする彼女。
     
    暫しの沈黙から、僕にありがたい命令が下った。
     
    「よし、あんたは今日から私の部下、餅つき班の班長ね」
     
    「はーい」
     
    いや僕だって流石に「はーい」は無いだろうと思うよwww
     
    ○月×日△曜日
     
    何もかもが変化を遂げた。
     
    兎少女は訊けば何でも教えてくれた。
    永遠亭の事、そこに住む兎達の事、兎達と一緒に住んでいる彼女よりも更に強大な力を持つ人物達の事。
    訊けば何でも教えてくれるが、自分から訊かないと何も教えてはくれなかったが。
     
    そして僕には仕事が与えれられた。
     
    餅つき班の班長としての仕事。
     
    まだここへ来て数ヶ月と経たない僕がいきなり班長と言うのはどうかと思ったが。
     
    「ああ、ここには人語を理解できる兎が他にいないからね、まぁいいじゃん」
     
    だそうだ。
     
    ここの偉い人たちは人語を使うので兎達と会話する事が出来ないと言う。
    兎達と会話できるのは、この兎少女ただ一人・・・。
    別に文句も無いが、良くそれで混乱が起きないなぁと思う。
     
    僕の見た所千は裕に越えているであろう兎達も、彼女に言わせると万は軽く越えているとか。
    食費だけでも相当な出費のはずだ。
     
    どうやって運営しているのか今度詳しく訊いてみようと思う。
     
    「で、姫様とその下に就いてる方がここのトップ2、その下にもう一人いて、更に下ると私がいる訳さ」
     
    例の小屋から臼と杵を担ぎ、彼女が出てきた。
     
    この小柄な身体でそれらを軽々と担ぐのもどうかと思うが・・・。
    そんな彼女よりも更にインパクトのある存在が3人(?)も居ると言う事か。
     
    「はい、これがあんたの仕事」
     
    よっこらせと僕の目の前に置かれた臼と、差し出される杵。
     
    迷う事無く受け取ったそれを握り締めた瞬間、その杵が僕の手に吸い付く様な感覚を受けた。
     
    まるで僕がここへ来たのは運命なのではないかと思える程、僕の体の一部なのではないかと思える程。
     
    いや、その時すでに、確実にその道具達は。
     
    僕の一部となった。
     
    永遠亭餅つき班第256番班班長の誕生である。

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